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シュンランの種子  [草花(春)]

シュンランの種子
前の記事「シュンランの花粉塊」の続きです。

昆虫に花粉を運んでもらう花の多くはその報酬に蜜を与えます。
しかし「シュンランの花は蜜を出さない」そうです。
そういえばシュンランには香りもありません。
それでは受粉はどのように行われるのでしょう。
昆虫(多くはハナバチ)は蜜を求めて飛んできて先ず唇弁に止まります。
シュンラン花粉塊斜め1wb.jpg

唇弁を前に倒してみると、内側には2列の大きな襞がありました。
いかにも蜜がありそうですが、底まで行っても蜜はありません。
念のためシュンラン5花について唇弁の溝を舐めてみましたが甘みは感じられませんでした。
シュンラン唇弁襞奥wbL.jpg

この花の花粉塊を見てみます。
葯帽をそっと除けると黄色い花粉塊が2組現れました。
シュンラン花粉塊粘着体3wb.jpg

爪楊枝でつつくと花粉塊がついてきました。
注目すべきは花粉塊についている強力な粘着体(粘着盤)です。
これでこの隙間に入り込む昆虫の背に張り付き他花へ運ばれます。
この時、花粉塊は「初めは葯帽を被っているが、やがて外れて次に訪れた花の蕊柱のくぼみに渡される」そうです(#1)。
シュンラン花粉塊粘着体wb.jpg

これは葯帽と花粉塊を取り除いた蕊柱(ずいちゅう)です。
「蕊柱のくぼみ」とは中央の帯緑色の部分で、ここが柱頭です。
艶やかで粘液が分泌されているように見えます。
ここも爪楊枝の頭の方で擦ってなめましたが甘くはありませんでした。
シュンラン蜜1wb.jpg

シュンランの花粉塊」の2枚目の写真を撮る時、手前に黒褐色の果実が1個あることに気付きました。
シュンラン2016果実wb.jpg

これは2012年1月28日撮ったシュンランの緑色の実です。
4月に咲いた花が結実したものですが、未だに完熟していません。
シュンラン果実wb.jpg

2013.3.31.撮影の花と実。
シュンランの実は花に比べてずいぶん大きく、翌年花が咲く頃やっと熟すのです。
受粉後、花茎は再び伸び出して大きな蒴果を作ります。
シュンラン果実1wb.jpg

2013.4.14. 蒴果残存。
残念ながらこの年は中の種子を確認していません。
シュンラン鞘wb.jpg

今年は1個だけ見つけた蒴果を採取し指で開いてみました。
シュンラン種子1wb.jpg

下の方に白い細かい繊維のようなものがありました。これが種子です。
大部分はすでに飛び散り、下の方にだけ残っています。
雨の後に採取したため種子もまだ湿っていました。
シュンラン種子2@.jpg

翌日乾いた種子を観察しました。
上に散らした埃のようなものが種子。
シュンラン種子2wb.jpg

全部詰まっていたら何十万個もありそうです。
シュンラン種子多wb.jpg

種子は長さ種子は長さ1mmほど、大きいものでも1.5mm未満です。
吹けば飛んでしまいますが、本当にこれで種子でしょうか?
シュンラン種子6wb.jpg

種子を顕微鏡で確認してみました。
中央部の黒い塊が胚のようです。
ランの種子は共生する菌から栄養を受けて発芽するため、胚乳がありません。
そのため種子は小さく軽く、翼や毛がなくても遠くまで風に運んでもらえるのです。
シュンラン顕微鏡1wb2.jpg

「虫媒花植物の多くは、蜜や花粉などを昆虫に提供して誘引しているのだが、ランの場合、半分くらいの種が蜜を提供せず、擬態など様々な方法で昆虫を誘っている」そうです(#2)。
シュンランは香りも蜜も出さず、花粉も与えず、昆虫に大きな花粉塊を運ばせることがわかりました。
受粉が成功すると、吹けば飛ぶような軽い種子がたくさんできます。
但し種子ができるのに1年、その種子が花を咲かせるためにはさらに数年かかるようです。

今年はシュンランの花がたくさん咲きました。来年蒴果がいくつできるか楽しみです。

文献
(#1)田中 肇. 2009. 昆虫の集まる花ハンドブック. 総合出版
(#2)井上 健. 1997. 朝日百科 植物の世界 9-223. 朝日新聞社
コメント(12) 

コメント 12

多摩NTの住人

またまた素晴らしい研究レポートですね。とても良くわかります。以前、マヤランなどの種子を観察しようと思ったのですが、粉末のようで良くわかりませんでした。実際はこのような形だったのかも知れません。
レディージェーン情報は有り難うございました。お陰で庭で楽しめました。
by 多摩NTの住人 (2016-04-17 15:44) 

夕菅

多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
足元に見慣れた植物でも向き合ってみると、知らなかったことがたくさんあって、生物の奥深さを教えられます。
自分で調べたつもりでも間違いがあるかもしれません。
お気付きの時はどうぞ教えてください。
レディージェーン、きれいに咲いてよかったですね。

by 夕菅 (2016-04-17 16:43) 

とんちゃん

シュンランの花の後に蒴果ができている場面はよく見てきました。
その成り行きはどうなってこうなるのか考えたこともなかったです。
花粉玉はちゃっかり運んでもらうのに・・・そのお返しもなく・・・
ハンマーオーキッドというランを思い出してにんまり♪
あの茶色の種子はこんなにもたくさん詰まっているんですね
実生となると相当の年数がかかりそう
顕微鏡写真!こういうことができるなんてすごいです!
by とんちゃん (2016-04-17 17:11) 

夕菅

とんちゃん コメントありがとうございました。
シュンランは無報酬で運び屋さんをさせる割には、あまり繁殖していません。やはりそれなりに報酬を払った方が子孫の繁栄に繋がるのかもしれませんね。
ハンマー・オーキッドの擬態に騙される雄蜂はお気の毒!
これで種子?と半信半疑でしたから、顕微鏡で確認しました。
こういう時はやはり便利です。
by 夕菅 (2016-04-17 21:20) 

703

夕菅さんの探究心に、ひたすら敬服。
本当にこれが種子かと、顕微鏡まで登場したのには驚きました。
シュンランの研究レポートで、勉強させてもらいました!

子どもの頃には山で自生しているシュンランを見ました。
かたまって何株か咲いている記憶があるのですが、
おっしゃるように、種を飛ばして増える感じではないですよね。

by 703 (2016-04-17 22:21) 

夕菅

703 さん コメントありがとうございました。
疑問のままに流れて行ったらこんなことになりました(笑)。
あんなにたくさんの種子を飛ばしたはずなのに、庭にはシュンランの自生株を見たことがありません。
今年はこの種子をばらまいてみようと思っています。

by 夕菅 (2016-04-17 23:03) 

エフ・エム

大変きれいな写真ですね。説明もわかりやすく、シュンランの花の構造がよくわかりました。
それにしてもハナバチが欲しいのは蜜、かわいそうな気がします。シュンランの工夫は大したものと思いますが、ハチへの報酬も考えて欲しいものです。初めて聞くお話、おもしろく伺いました。蜜を出さないというのは、他のランも同じでしょうか。
by エフ・エム (2016-04-18 11:16) 

夕菅

エフ・エムさんコメントありがとうございました。
ランはシラン、デンドロビューム、カトレアなど半分くらいの種が蜜を出さないようです。
庭のエビネとギンギアナムを確認しましたが、香りはあるものの蜜はありませんでした。
そのうちにハチも学習して騙されなくなりそうな気がしますが.......?
by 夕菅 (2016-04-18 19:32) 

リンちゃんママ

どんどん引き込まれてしまう観察です。種ができるのに一年とは長いです。そして数年かかり花を咲かせるとは気の長い花ですね。種の数からいっぱい増えそうでもそうでもないのですね。蜜がなければ蜂は寄ってきませんか?綺麗な花に魅せられ寄って来る蜂もいるのでしょうか。今朝水やりのとき花の中の草が気になり草を取ろうとしたら蜂に刺されました。痛かったです。
by リンちゃんママ (2016-04-18 23:17) 

夕菅

リンちゃんママ さん コメントありがとうございました。
今年の花は50位ありますがハナバチは見ていません。
昨年は数えてはいませんが、10や20花ではなかったはず。
蒴果は1個しかできませんでしたから、ハチはあまり来ないのでしょうね。
もうハチに刺されました? アシナガバチでしょうか? たいへんでしたね。

by 夕菅 (2016-04-18 23:38) 

花咲かばあば

シュンランの花の様子をくわしく見せていただきました。
土壌の中に長く長く根を広げていく植物は、種子から増やすことはむつかしいようですね。
あれだけのたくさんの種子が飛ばされていても、あちこちに発芽は見られないようですね。
うまくシュンランの株元に着床しないとむつかしいと書かれていました。

近くの山に、イワカガミが咲きだしました。去年よりも広がって見事です。
25年ぶりに会った友達と一緒に楽しみました。
by 花咲かばあば (2016-04-19 12:30) 

夕菅

花咲かばあば さん コメントありがとうございました。
やはりシュンランを種から育てるのはむつかしそうですね。
発芽には共生菌の助けを要するので、株元では育ちやすいのでしょう。
ダンボールを利用する方法もあるようですが、そこまで試す元気はありません。
イワカガミの群生を懐かしいお友達と一緒にご覧になれてよかったですね。歓声が聞こえるようです。
by 夕菅 (2016-04-19 17:02) 

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